舞台はイタリア、日本モチーフのダークヒーロー誕生!『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のすすめ

世界には、色々なスーパーヒーローがいる。クモに刺されて超人的な力を手に入れた者もいれば、執事とこっそり暮らしているヒーローもいる。下ネタ大好きなヒーローもいれば、まとめてレゴにされちゃうこともある。そして今回、また新たなるダークヒーロー・ムービーが、なんとイタリアで誕生した。日本文化へのリスペクトを捧げて作られた映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』だ。 

『鋼鉄ジーグ』の名前を聞いたことはあるだろうか?これは『デビルマン』や『マジンガーZ』などの著者永井豪が手がけた、1970年代に日本で放送されていたアニメのタイトルなのだ。実はこの『鋼鉄ジーグ』は79年にイタリアでも放送。幼い頃から日本アニメのファンだったガブリエーレ・マイネッティが『鋼鉄ジーグ』を重要なポイントに作り上げたのが今回の映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』なのである。 

(c)2015 GOON FILMS S.R.L. Licensed by RAI Com S.p.A. – Rome, Italy. All rights Reserved.

 フランスやイタリアといったヨーロッパ映画に、スーパーヒーローが登場だなんて、今まであまり聞いたことがない。しかもそのスーパーヒーローとは日本のアニメがモチーフ…。全く想像がつかない皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、いったいどんな映画なのだろうか。今回は2017年5月20(土)より公開となる本作の魅力を真っ先にお伝えしていきたい! 

 映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ストーリー 

 舞台はテロや犯罪が蔓延し、すっかり荒廃してしまった街ローマ。主人公エンツォも盗品を売りさばき、孤独なその日暮らしの生活を送っていた。しかしエンツはある日ひょんなことから、強大なパワーの特殊能力を手に入れてしまうのだ。

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そんな中、唯一交流のあった男セルジョが殺され、エンツはセルジョの娘アレッシアの面倒を見る羽目になってしまう。アレッシアは日本のアニメ『鋼鉄ジーグ』の世界に陶酔している、ちょっとヘンな女の子なのだ。最初は自分の欲だけのためにパワーを使っていたエンツもアレッシアとの交流を通して、だんだんと正義に目覚めていく。

やがてエンツとアレッシアの間には恋が芽生え始めるが、悪の組織のリーダー、ジンガロが2人の行方を阻み…という物語だ。 

奇妙でバランス抜群な作品 

海外の映画にいきなり日本の曲が流れたり、日本のアニメが現れるとなんとも奇妙な心地になる。『リザと狐と恋する死者たち』『マジカル・ガール』、『嗤う分身』などでも日本の歌謡曲が使用されていたが、それだけでどこかファンタジックで個性的な印象が強く残る。この皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』もまた、そんな奇妙な日本文化の融合が楽しめるところが魅力の1つだ。 

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この作品を「他のどんな映画に雰囲気が似ているか」と聞かれれば、「タランティーノっぽい」と筆者は考える。少々過激なグロテスク描写やお色気シーン、ギャングの世界、そして日本文化への大きなリスペクト。『キル・ビル』や『パルプ・フィクション』をどこか彷彿とさせる。

日本のアニメ、ギャングの抗争、スーパーヒーロー、少々風変わりなヒロイン。それぞれ全く違う素材が不思議なぐらいぴったりと合わさり、今までに無い新しいヒーロー映画となっているのが『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』なのだ。 

新しい”ダークヒーロー” 

”スーパーヒーロー”の定義とは何だろう?悪より善を選び、正義のために立ち上がる。しかしヒーローだって必ずしも最初から、正真正銘の善人というわけではない。善と悪は表裏一体であるし、表舞台で活躍するヒーローだって実は孤独も抱えている。それは様々なヒーロー映画で描かれてきた。 

(c)2015 GOON FILMS S.R.L. Licensed by RAI Com S.p.A. – Rome, Italy. All rights Reserved.

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』でひょんなことから特殊能力を授かってしまう男、エンツ。彼の最初の姿はなかなかひどいものだ。小さな暗い部屋で大好きなヨーグルトばっかり食べながら夜な夜なポルノ鑑賞、体だって『バットマン』みたいに引き締まってなんかいない。おなかもたるみきった、中年のおじさんそのものだ。

アメコミのヒーローたちはかっこいいマスクを持っているが、エンツはそんなマスクも持っていない。銀行強盗がつけるような怪しい覆面だけである。服だってよれよれした、全くイケてないパーカー。しかし物語が進むにつれて、このエンツに誰もが感情移入してしまうし応援したくなってしまう。

それは、この作品が”大切な人ができた時、人は強くなれる”という普遍的なテーマを描いているからである。 

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慕っていたセルジョの娘、アレッシア。彼女は『鋼鉄ジーグ』の世界と現実の世界を混同している、エキセントリックな女の子だ。最初は戸惑うエンツだが、孤独な2人は『レオン』のレオンとマチルダのように心を通わせ、そしていつしかお互いがいなくてはならない存在になる。エンツが正義のヒーローへと変わった理由”アレッシアへの愛”なのだ。

どうしようもなかった男が、大切な人のために変身していく。その姿がとてもナチュラルに描かれていて、ルックスも極めて”普通”だからこそ、私たちも心が動かされてしまう。 

日本のアニメとイタリア映画の融合、確かに異色で斬新なヒーロー映画だが、実はいつの時代も変わらない美しい愛と正義の物語なのである。 

 悪役はジョーカー×アレックス? 

さて、ヒーロー映画に欠かせない存在はやはり魅力的な悪役である。今回エンツとアレッシアの前に立ちふさがるのは闇組織のリーダー、ジンガロだ。 

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このジンガロという男、自己中で潔癖性、そしてとにかくナルシストだ。しかし自分を邪魔する者気に入らない者は容赦なく排除する恐ろしさ、ヘラヘラと浮かべる恍惚とした笑みはどこかジョーカー(DCコミック)を彷彿とさせる狂いっぷりだ。また、音楽をかけながらの殺戮シーンは、『時計じかけのオレンジ』のアレックスも思い出させる。

彼らに負けないぐらいの狂気をみせるジンガロ役、ルカ・マリネッリの怪演にもぜひ注目してほしい。

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 イタリアからやってきたダークヒーロー映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』。今までに観たことがないヒーロー映画だが、作品いっぱいに広がる日本文化への愛と大切な人のために戦う1人の男の姿に、きっと心を鷲掴みにされること間違いなしだ。 

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、2017年5月20(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。

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フリーライター(1995生まれ/マグル)

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