硝子と関わるのがコワイと思った…映画『聲の形』レビュー

映画『聲の形』評価・感想

2014年に週刊少年マガジンでの連載を終えた大今良時原作マンガのアニメ映画化。
高校生の石田将也(入野自由/松岡茉優)は、小学生時代に耳の聞こえない転校生 西宮硝子(早見沙織)をイジメていたことが起因となり 孤独な日々を過ごしてきた。
罪の意識・周囲の蔑みに苛まれ 自ら死を選ぼうとする将也であったが、硝子と再会したことで生きる道を 彼女への贖罪の方法を模索していく。
他者に想いを伝えることの難しさ 誤解なく分かり合うことができた時の喜びを描いた作品だ。

連載当時、毎週コンビニでマガジンを読んでいた。
立ち読みのくせに、何度も何度も泣きそうになった。

ぼくはそのストーリー展開をすべて把握していた
尺の都合上カットされているエピソードがあることも分かっていた
だが、そんなことは最早関係なかった。

アニメーションになったことで
登場人物達に声優さんの声が吹き込まれたことで
硝子の声を耳にしたことで

涙なしでは観ていられなかった。

今回の映画化にあたり気が付いたことがあった。
スクリーンではじめて硝子の声を耳にした時、ぼくは引いてしまった。

軽蔑してもらって構わない
引いてしまったんだ。

原作では書かれた文字を読んでいただけで深く感じ取れていなかったのだが、声優の声があることによって まるであの教室にいる生徒のひとりになったような気分であった。

彼女と関わるのがコワイと思った。

彼女のことを嫌いだとかそういうことではない
それまで目にしたことのない存在を前に、不安しかなかった。

どう接するのが正しいのか
一緒にやっていけるのか
面倒ごとに巻き込まれるのではないか

そんな自分の卑しい気持ちに囚われてしまった。

きっと誰もが「まさか自分に限って」「イジメなんて無縁」と思っている。
ぼくもそうだったけど、その事実を見ようとしないだけで 見たくないだけで素質は充分にある。

思い返すと、間接的ではあったとしても 加担してしまったことがあったのかもしれない。
その現場を目撃しても、関与することを避けていたことがあったのかもしれない。

いや、言い訳はよそう
正直に書こう。

自分でそう思いたくないだけであって、加担してしまった事実はある。
無関心という名の加担も確実にしていた。

将也が背負ってしまうモノ
それを自らも背負ってしまう可能性が確実にあった。

そのリアリティが
自分の嫌な部分が
序盤で描かれる小学生時代のエピソードが
ぼく自身にも罪悪感を与えた。

その想いが芽生えてからというもの、将也の姿を追っていくのがツラかった

痛くて しんどくて 逃げ出したくて 逃げ切れなくて 向き合うしかやっぱりなくて
必死に足掻く将也の姿が
将也と等しくもがき続けている硝子の姿が
見ていて只々ツラかった。

ツラかったが、それでも前へ進もうと懸命に生きる2人の姿には終始胸を打たれっぱなしであった。

涙が流れっぱなしであった。

誰だって大なり小なり 後悔の念があると思う。

取り返しのつかないことをしでかしてしまった時、それをなかったことにできたのならどれだけ幸せだろう。

でも、そんな選択肢は そんな答えはそもそも選べない
最も欲する道が断たれた以上、別の何かを選ばなくてはならない。

すべて忘れ去ろうとする
向き合うことから一生逃げ続ける

どちらも一応選択可能ではあるが、確実に胸にシコリが残る。
辿り着く末路も決まっている。

やってしまったこと その事実を認め、今できることを模索する
最も険しく 最も困難な選択肢
けれど、それこそが最も重要で意味のある選択肢でもある。

その道には困難しかない
結果、自らが傷付くだけで終わることもある。
喜びを得られることなど稀だろう。

何をどうしたってなかったことにだけはできない

終わりを迎えることも 答えに辿り着くこともない

一生胸に抱えて生きていくしか道はない。

その上で、その想いを胸に宿した上で「生きていく」ことこそが最も重要なのかもしれない。

答えはやはり分からない
が、希望だけは諦めずに持ち続けていたい
持ち続けて生きていきたい。

アニメ作品だからという理由で敬遠しているのであれば大きな間違いです。

この作品には大事なモノがしっかりと描かれている。

将也の姿に 硝子の姿に感じるモノが
同じ人間だと想える葛藤がこれでもかという程に詰まっている。

ぜひ劇場でご覧ください。

no-image
週間マガジンに連載され数々の賞に輝いた大今良時さんの『聲の形』。『けいおん!』シリーズや『たまごラブストーリー』の山田尚子監督が手掛けた劇場版が好評です。スタッフトークつき上映会で

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ポップカルチャーは世界を変える

Twitterでoriver.cinemaをフォローしよう!


こちらの記事もオススメ

JOIN THE DISCUSSION

※承認されたコメントのみ掲載されます。