ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、おそらく映画史に残る作品だ。それは本作が、名だたる『スター・ウォーズ』シリーズの一部だからではない。もちろん『スター・ウォーズ』は映画史に残るシリーズであり、『ローグ・ワン』もその一部として映画史に刻まれることには違いないが、それよりもこの作品は、明らかに革新的な技術を実用した映画として歴史に残るはずなのだ。

これ以上は本編の重要なネタバレを含むため、本作が劇場公開中である以上、この時点で多くを語ることはできない。本記事は、『ローグ・ワン』における“ある人物の復活”と、そのために達成された血の滲むような努力の全貌を解説するものである。

【注意】

この記事には、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレが含まれています。

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映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、劇場公開から約3週間が経ち、すでに多くの観客から高い評価を獲得している。しかし本作で同時に語られがちなのが、“本編の半分以上が

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『ローグ・ワン』における最大のサプライズ、それはウィルハフ・ターキン総督レイア・オーガナの登場だった。それも、多くの映画がやるような、代役を立てるという方法によってではない。最新技術を駆使することにより、1977年公開『エピソード4/新たなる希望』のビジュアルに限りなく近い姿で、ふたりはスクリーンへの復活を果たしたのである。

今回、『ローグ・ワン』でCGを手がけたILM(インダストリアル・ライト&マジック)社のCGチームが、ABCニュースの番組「ナイトライン」で、この“復活劇”の秘密を語った。

超困難な復活劇

ILM社のチーフ・クリエイティブ・オフィサーにして、『ローグ・ワン』では原案・製作総指揮・視覚効果スーパーバイザーの三役を務めたジョン・ノール氏は、レイアとターキンが『ローグ・ワン』には欠かせなかったと語っている。

「この映画の本質は『エピソード4』にきちんと繋がることだ。だから(デス・スターの)設計図を手にしたレイアで映画が終わることが重要だった。ターキンも『エピソード4』やデス・スター計画の重要人物だ。しかもこの映画では、デス・スターの恐ろしさとその意味、また反乱同盟軍がその脅威にどう反応するかが描かれている。ターキンがその一部であることは大切なことだったのさ」

https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd.

https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

しかし『新たなる希望』でターキン総督を演じたピーター・カッシングは1994年に病没しており、本人がターキンを再演することはできなかった。そこで製作チームが選んだのが、“CGでカッシングを蘇らせる”という方法だったのである。むろん、この方法は一筋縄でいかないことは当初から分かっていた。ノール氏はインタビューでこう語っている。

「すごいプレッシャーだった。つまりデジタル・ヒューマンだ、コンピュータ・グラフィックでは最も難しいことだよ」

頭部はCG、身体は人間

さきほど「代役を立てるという方法ではない」と書いたが、厳密にいえばこれは間違いだ。製作陣が採用したのは、実際の役柄を俳優に演じてもらい、その頭部をCGに作り直すという方法だった。すなわち頭部はピーター・カッシングや19歳当時のキャリー・フィッシャーだが、身体は生身の人間なのだ。

『ローグ・ワン』でターキン役に抜擢されたのは、イギリスで活躍する俳優ガイ・ヘンリーだった。

http://www.bbc.co.uk/programmes/p00h87z9 ©BBC

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故ピーター・カッシングとヘンリーには、体格がよく似ている以外にも共通点があった。ギャレス・エドワーズ監督は、キャスティングのためにヘンリーの映像を観た感想をこう語っている。

「彼(ヘンリー)はとにかくピーター・カッシングに似ていた。ヘンリーは、若きシャーロック・ホームズ役をイギリスで演じたことからテレビでのキャリアをスタートさせている。その時、役柄を理解するために、彼はカッシングが演じたシャーロック・ホームズ(1965年)をすべて観ていたんだ。[中略]それから年月を経ても、彼の中にはカッシングがいた。映像を観て、すぐに(プロデューサーと)顔を見合わせたよ。“見つけた”と思った

かつてシャーロック・ホームズという同じキャラクターを演じた二人の俳優は、こうして『スター・ウォーズ』で再会することとなった。ターキン役を演じるにあたって、ヘンリーは『新たなる希望』のカッシングを何度も観て研究したという。どんな声を出すのか、どんな身ぶりなのか……。

ちなみにヘンリーと製作チームは、どこかで見たことのあるシーンをテストとして撮影したようだ。

https://www.facebook.com/video.php?v=1319338091439248 © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd.

https://www.facebook.com/video.php?v=1319338091439248 © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / ©ILM

もはやCGを使わなくても十分にターキンなわけだが、ピーター・カッシング演じるターキンの復活は、こうしてヘンリーがターキンを演じるところから始まった。彼はターキンの衣装を身につけ、ヘッドマウント・カメラと呼ばれる機材を頭部にセットして、撮影に臨んでいる。

http://www.nytimes.com/2016/12/27/movies/how-rogue-one-brought-back-grand-moff-tarkin.html TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

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https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

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こうして撮影された実写の素材をもとに、まずはヘンリーの頭部のCGモデルが作成されるのだ。ノール氏がいうところの、“デジタル・ヒューマンとしてのガイ・ヘンリー”である。

https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

こうしてCG化されたヘンリーの頭部が、カッシング演じるターキンへと変換されていくのである。

もちろん、ILMのCGチームもカッシングの演技を入念に研究していた。筋肉の細やかな動き頭の振り方唇のねばつきといったことまでも再現すべく、フレーム単位でこだわって微調整が続けられたという。ちなみにノール氏は、ニューヨーク・タイムズの取材で、こうした調整を行う以前のターキンは「カッシングのようには見えるものの、正確には彼ではない」状態だったと話している。

またCGチームの大きな助けとなったのは、カッシングが映画『トップ・シークレット』(1984年)に出演した際に作成された、本人の“顔の型”が発見されたことだったという。

https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do © ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

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こうして『ローグ・ワン』のターキンは、実に18ヶ月もの時間をかけて、ピーター・カッシングの姿を得てスクリーンに甦った。同じくニューヨーク・タイムズの取材によれば、もしこの方法が成功しなかった場合、ターキンの登場する方法を変更し、出番ごと減らすことをノール氏は検討していたという。

「ターキンがホログラムで会議に参加するとか、彼の台詞を別のキャラクターに変更する可能性について話し合ったよ」

しかし幸いにも、ターキンは製作チームの理想を実現するかたちで本編に登場することができた。製作のプロセスを解説されてもなお、『ローグ・ワン』のターキンはCGに思えないほどリアルである。

ちなみにABCニュースのレポーター、クライトン・サンデル氏は、放送では使用されなかった場面も含めたガイ・ヘンリーの撮影現場の映像をアップロードしている。ギャレス監督やノール氏も映っており、メイキングとしても貴重なので、ぜひご覧いただきたい。


19歳のレイア姫、そして倫理の問題

『ローグ・ワン』のラストに登場したレイア姫の再現にも、ターキンと同様の方法が採られている。ノール氏によれば、本作での登場が先に決まっていたのは、実はターキンではなくレイア姫だったという。

『新たなる希望』に登場した19歳のキャリー・フィッシャーを再現するため、俳優として起用されたのは、1987年生まれの女優イングヴィルド・デイラだった。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』にも脇役ながら出演していた人物だ。

https://vimeo.com/103845650 © 2015 MARVEL

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昨年末に急逝したフィッシャーは、この“19歳のレイア姫”の製作にも関わり、その出来ばえを喜んだという。また、故カッシングの関係者もターキンのCG製作に協力しており、同じく完成した映像を絶賛している。それでも今回の試みには、一部のメディアから「死者に敬意を払っていない」、「デジタルによる侮辱だ」という批判があった。

そうした声に対し、ノール氏は「この仕事はとてつもない愛情と配慮によるもの」と応答した。故人であるカッシングにターキンを演じさせたことについては、「本作でターキンが担った役割を、きっとカッシングは喜んで演じただろうと思いたい」とコメントしている。またデジタル・キャラクター・モデル・スーパーバイザーを務めたポール・ジアコッポ氏は、今回のプロジェクトについて「すごく興奮したし、すごく恐ろしかった」と述べ、死者を甦らせる作業、俳優本人からも失われたビジュアルを取り戻す作業のデリケートさをうかがわせた。

現在『ローグ・ワン』の“復活劇”は、フィッシャーの死によって、当初は想定されていなかったであろう注目を受けている。『エピソード9』のレイア姫を、CGのカッシングにターキンを演じさせたのと同じ方法で実現してほしいというファンが少なくないのだ。再び今回の方法が採用されるのか、それとも別の方法が選ばれるのかはまだわからない。いずれにせよ、映画史に残る革新的技術を生んだ『スター・ウォーズ』シリーズは、まさに今、その技術の使い方を自ら問われている

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多くのサプライズを提供してくれた『ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー』だが、中でもとりわけ驚きだったのが、『新たなる希望』に登場するあるキャラクターが蘇っていたことでは

sources: https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do
http://abcnews.go.com/Entertainment/carrie-fishers-reaction-latest-star-wars-cameo/story?id=44571752
http://comicbook.com/2017/01/05/ilm-was-excited-and-terrified-to-create-digital-tarkin-for-rogue/
http://comicbook.com/2017/01/05/rogue-one-a-star-wars-story-ep-comments-on-ethics-of-digital-res/
http://www.empireonline.com/movies/features/rogue-one-13-revelations-director-gareth-edwards/
http://www.cinemablend.com/news/1602200/rogue-one-meet-the-actress-who-played-that-major-star-wars-cameo
http://www.nytimes.com/2016/12/27/movies/how-rogue-one-brought-back-grand-moff-tarkin.html
Eyecatch Image: https://www.youtube.com/watch?v=xMB2sLwz0Do
© ABC News / TM & © Lucasfilm Ltd. / © ILM

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1989年生まれ。映画・演劇に関するニュースやコラムなどの執筆、また舞台脚本(台本)の構成・編集を手がけています。オリジナル記事、翻訳ベース記事ともに担当しております。お気づきの点などございましたら、ぜひお知らせくださいませ。

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Comments

  • 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』 2017年1月7日 at 9:01 PM

    […] […]

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