『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ヨンドゥの魅力を文学的風味に解剖する【洋画ファン的なりたい漢2】

皆様ごきげんよう。いきなり寒くなりましたよね。東京では11月に初雪が降るのは54年ぶりだなんだっつって騒いでますが、お風邪など召さないよう重々ご自愛なさってください。

ところで突然話は変わりますが、小生、映画フィギュアコレクターの端くれとして、ここ二年間の長きにわたってずっと怒っていることがあります。何がって、HOTTOYSですよ。彼らはなんでムービーマスターピースでヨンドゥ出さないんでしょうか。そもそも、というかまさか「予定がない」なんてことあるのでしょうか。

トイサピエンスから新製品情報のメルマガが届いて、サイト覗くたんびにトルーパーのバリエーションだったり、アイアンマンスーツのカラバリだったりの日々。「もうええわ!」とスマホ片手に電車の中で叫びそうになります。

ヨンドゥの後、ネビュラとロナンとコレクターもつかえとんのやぞ、ワシが寿命で死ぬまでに全部間に合うんかのう!?こないだの健康診断、血中コレステロール多めやったから、そんなに長いことないかもしれんで!
…このぐらい言っても、筆者はこれまでHOTTOYSのムービーマスターピースを30体以上購入してきてるので、多めに見てもらえるはず、愛情ゆえの苦言と受け取ってもらえるはずです。

そんなわけで、今回は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』からヨンドゥ・ウドンタの「文学的な」特集です。

@michael_rooker is back as #Yondu in #GotGVol2!

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「マーベル映画史上最高傑作」「SF映画の新たなマスターピース」-2014年に公開された映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は”マイナーキャラばかりの地味な映画”という事前の予想を覆し、興行収益的にも、観客満足度の面でもほぼ満点の結果を残しました。この映画を表して尽くされた賛辞は枚挙に暇がなく、中には「新時代のスターウォーズなんて表現する人もいて、スターウォーズに振り回される人生を送ってきた身としては一瞬、「その表現の重さがわかっているのか」と穏やかならざる感情が沸き起こりますが、まあガーディアンズ・オブ・ギャラクシーならいいか、と妙に納得できるのは、イチ映画ファンとしてSF映画の未来のことを考えても喜ばしいことだと思います。

この映画の魅力は多岐にわたり一言では語りつくせませんが、筆者的にお気に入りのポイントは何といっても「ヨンドゥ・ウドンタ」というキャラクターです。ご存じない方もいらっしゃると思うので、駆け足でこのキャラの概要をご紹介します。

ヨンドゥ・ウドンタとは

ヨンドゥ・ウドンタ(マイケル・ルーカー)は宇宙海賊ラヴェジャーズのリーダー。青い肌と、モヒカンのようなヘアアスタイル、髪の代わりに頭頂部に埋め込まれた機械式のフィンがトレードマークです。利に敏く、荒くれものゆえ粗雑で乱暴ですが、冗談が好きであまり根に持たない性質のため、部下からの信頼は厚いようです。小さくてヘンテコな玩具が好きで、自らの船の艦長席のダッシュボードにファンシーグッズコレクションを並べているかわいらしい面があります。

Yo Rooker/Marvel/Disney/TWD/guardians of the galaxy FANS!!!!/Everybody else…….We have 34hrs and 52min….enjoy

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何かの目的があって幼いピーター・クィル(クリス・プラット)を地球から拉致しますが、その目的は果たさないまま、ピーターを子分として育てました。月日は流れ、ピーターはスターロードと名乗る一人前の賊に成長しますが、ラヴェジャーズを裏切り、秘宝オーブを奪って逃亡します。ヨンドゥはこれを追跡、オーブが狂信者ロナンの手に渡ってしまった後、ピーターを捕縛、裏切り者として処刑しようとしますが(すごい殺したくなさそうでした)、必死のピーターから、オーブに伴う儲け話をもちかけられ一転。ロナンを敵に回し、ピーター率いるガーディアンズやノバ軍との共闘を決意。
戦闘の最中、ロナン配下の大勢のクリー軍(チタウリかも)に単身包囲されピンチに陥りますが、口笛で操る矢「ヤカ」にて敵を殲滅、圧倒的な戦闘力を示します。

最後の戦いにガーディアンズが勝利した後、約束の報酬としてピーターからオーブを奪いますが、オーブはピーターによってすり替えられた後でした。自らの宇宙船内で一杯くわされたことに気づいたヨンドゥ。ケースの中身のトロル人形を見るその表情は何故か嬉しそう、ってこんな感じのキャラです。

YoBabyYo…..Yondu @jamesgunn @guardiansofthegalaxy #twd #marvel

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私見ですが、このヨンドゥというキャラクターは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という映画の、オーソドックスな作りのストーリーに予測不能な変化を与えるアクセントとして、とても重要なピースでした。作劇上の重要度でいえば、ガーディアンズのメンバー、ガモーラやドラックスよりも上だったといって過言ではないと思います。そして、このヨンドゥ込みの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』作劇のバランスには、非常に好ましい、それでいて重厚な既視感を覚えます。

端的に言うとヨンドゥというキャラは、誰もが知る有名な文学作品に出てくる、あるキャラクターにとてもよく似ているのです。その文学作品とは、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの海洋冒険小説「宝島」(1883)、あるキャラクターとは、「海賊ジョン・シルバー」です。
「宝島」という小説の存在を知らない方はいないと思いますが、知っているのと実際読んだことがあるということは別だと思いますので、一応念のためwikipediaより「ジョン・シルバー」の「プロフィール」を転載させて頂きます。

宝島 (岩波少年文庫)

『色が薄い髪と蒼白い顔をした年配の男で、左足を失っており、松葉杖を驚くほど巧みに扱って動き回る。片足はイギリス海軍に従事していた時に戦闘中の砲撃で失ったと語っている。

シルバーはかつて、悪名高い海賊フリント船長の手下の操舵手であった。操舵手は船長を除けば地位として最上ランクであり、船が戦闘時でなくとも、船長の採決を拒否する資格があった。操舵手は乗組員より選挙され、主な仕事の一つには戦闘時に甲板から搭乗者を指揮した。

彼はフリントが恐れる唯一の男だった。フリントの死後はその船員たちからも恐れられたが、一方で高く評価されてもいた。スティーブンソンのキャラクターの多くがそうであるように、彼の性格には二重性がある。基本的には勤勉で愛想が良く、相手の長所を褒めるのが上手い、愛すべき立派な海の男だが、一方では状況判断と人心掌握に優れた、抜け目なく油断ならない冷酷なならず者であった。そして彼はその両面を自在に使い分けることができた。

片足をなくしているにも関わらず、運動能力に優れ、日常動作はほとんど常人に引けを取らず、戦いになっても危険な男だった。五人の屈強な船乗りを相手にしても冷静に立ち向かえるほど豪胆でもある。

またシルバーは海賊らしくない経済感覚の持ち主で、手に入れた財宝を浪費したりせず、複数の銀行に預けて通帳で堅実に管理していた。あぶく銭を使い果たして破滅した元同僚達を彼は嘲笑っている。とはいえ、フリントの莫大な隠し財宝には人並みに執着を見せた。彼はブリストルで「遠めがね屋」(the “Spy-glass”)という居酒屋を黒人の妻とともに経営しており、宝島へ向かう船には料理番として乗り込むなど、料理の腕もある。「肉焼き」「海のコック」とはこれにちなむ呼び名でもある。彼は宝島捜索を終える頃には海賊としての素性が露呈することを見越しており、店舗の清算と資産の引き上げを妻に手配していた。

元の船長をあざけるかのように「フリント」と名付けたオウムを飼っていて、オウムのフリントはよくシルバーの肩を止まり木代わりにして鳴き声を上げていた。』

ジョン・シルバー – Wikipedia

ヨンドゥとジョン・シルバーの共通点

長編小説におけるキャラクターのバイオグラフィーを、数行で理解してくれというのは無理な話ですが、ご興味を持たれた方は是非、「宝島」の「あらすじ」wikiも併せて読んで頂くと、なんとなく言いたいことが伝わるのではと思います。以下に、ヨンドゥ・ウドンタとジョン・シルバーの共通点を挙げてみます。

  1.  どちらも、海賊のリーダーである。
  2.  どちらもユーモアがある人物である
  3.  どちらもコワモテに似合わないものが好きである(ヨンドゥは玩具、シルバーはオウム)
  4.  どちらも主人公の疑似父親的存在である
  5.  どちらも常人よりも遥かに腕っぷしが強い
  6.  物語の鍵となるアイテムを巡って主人公と対立する(ヨンドゥはオーブ、シルバーは宝の地図)
  7.  最終的には主人公と協力して目的を達する
  8.  エピローグで主人公に一杯食わされるが(シルバーは逆)、清々しい去り際を残す

いかがでしょうか。恣意的に共通点をお迎えに行ってはいますが、このように「宝島」に登場するジョン・シルバーは、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のヨンドゥの雛形といってもいいほど、キャラクターの立ち位置、性格、作劇上果たす役割に共通点が多いのがお分かりいただけると思います。

このヨンドゥの、ジョン・シルバー似の設定は、ジェームズ・ガン監督の意図したことか、それとも人類史上に残るマスターピースといっていい文学作品ゆえに、ガン監督の血肉となってしまっており、知らず知らずのうちに「似てしまった」のかは分かりませんが、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』がその軽快な見た目と裏腹に、しっかりした物語の軸を持つ重厚な作品であるという印象を受けるのは、こういった、100年以上の時の流れの淘汰を受けて今なお生き続けるキャラクター造形の「定石をおさえている」からこそ、と言えるのではないでしょうか。

読者の皆様が次回、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をソフトでご覧になるときは、ヨンドゥを「ただの変なおっさん」ではなく、こういった背景もあるキャラなんだということを踏まえて、ぜひラヴェジャーズを応援しながら見ていただいてですね、で、めでたくヨンドゥファンになった暁には、HOTTOYSジャパンにですね、「ヨンドゥのフィギュアまだー?」とメールを送って頂けたなら、小生これに勝る倖せはございません。

About the author

1977年生まれ。週刊少年ジャンプ脳のクリーチャー愛好家。玩具コレクター。エンドレスダイエッター。「意識低い系」の文章を信条としています。

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